セックスしたい。
最近毎日のようにこれを思う。
年を取れば性欲なんてなくなると思っていた。でも
そんなことはなかった。
セックスをしたいのに、
それができなくなっていく。
まず相手を見つけるのが難しい。
セックスしたいと思っても
セックスは共同作業だ。
一人ではできない。そこには
自分以外の誰かが存在している。
二人以上でしかできない運動…それがセックスだ。
いまこの段階でもセックスという単語を
使いまくっている。
耳にたこができそうなくらい、使っている。
それだけいま俺の頭の中にはセックスしかない。
セックスしたい。
でもできない。
相手がいないから。
こんなことなら若いうちにとっとと結婚しておくべきだった。
若いときに
まだ焦らなくても大丈夫だと余裕をかまえ
こだわり選んでいた青い馬鹿な自分を呪った。
かといってお金を払ってまで
セックスをするのはプライドが邪魔をして、
できない。
こんなときにでも出てくるプライドに
嫌気がさす。
俺は消せるものなら性欲を消したい。
人間はこの欲望に支配されている。
この欲望さえ消えてしまえば
ずいぶん楽に生きていける気がするのに。
そう思いながら、アダルトビデオをみて
オナニーをする。
精液がたまったティッシュがゴミ袋に
たまっていくのを見つめるたびに
嫌な気持ちになる。
独り身がこんなに虚しいと思ったことはない。
こんなことなら結婚しておけば良かった。
若い人でさえ結婚難なこの時代に
五十代で平社員の自分が結婚できるとは
思えない。
まったく、なんて誤算だ。
アダルトビデオの電源を切った。
ため息をつく。
俺は、パソコンからネットでデリバリーヘルスの
サイトをみつめた。
金で女を買うことにした。